この記事の目次
はじめに
今回はダイビング終了時、エキジットする際のリスクについて考えていきます。
皆さんも普段の行動を思い出してみてください。
水深5mで安全停止を終え、いざエキジット。
ボートへ上がるためにラダー(はしご)に近づきます。
そのときの浮上速度に気をつけていますか?手を伸ばして足を一掻きすれば届くラダーに飛びついていませんか?
実は危険なこの行動の理由を見ていきましょう。
空気の体積変化
問題です、以下の水深(0~30m)で10Lの空気が移動します。(密閉状態、風船で考えてみましょう。)
空気の体積変化量が大きいのはどれでしょう?
① 10mから水面に浮上
② 20mから10mに浮上
③ 30mから20mに浮上
④ どこでも一緒
解答を一つずつ計算していきます。
おなじみのボイルの法則、使うのは→ P₁×V₁=P₂×V₂
※P=圧力 V=体積
水面気圧を1気圧としたとき、以深10m毎に1気圧増えていきます。
水面=1気圧 10m=2気圧 20m=3気圧 30m=4気圧・・・
① V₂=P₁×V₁/P₂ = 2(気圧)×10(L)/1(気圧)
V₂=20L
つまり水深10mで10Lの空気は水面まで浮上すると20Lまで膨張します。
この10m間での変化量は10Lです。
以下同様に計算すると
② 3×10/2=15 → 20mで10Lの空気は10mで15L、変化量は5Lです。
③ 4×10/3=13.33... 30mで10Lの空気は20mで13.33...、変化量は3.33...となります。
ということで空気の体積変化量が大きいのは、①の水深での移動でした。
急浮上の危険性
前項で同じ10m間の浮上であっても水深が浅い方が体積の変化量が多いことが分かりました。
前項の風船を人間の肺に置き換えてみても同じ。
息を止めて浮上した場合、肺が大きく膨張するのは水深の浅い場所です。
つまり折角ゆっくり浮上し安全停止をしても、最後の最後に水面下でラダーに向かって飛び出すと
肺の中の空気が膨張し、肺の過膨張障害を引き起こす危険性が高くなるのです。
また、体内の窒素の排出が間に合わず減圧症を引き起こすことも考えられます。
リスクを回避するには
深度に合わせて浮上速度をコントロールします。
昔は1分間に18mと言われていましたが、今では1分間に10~8mとも言われています。
特に安全停止を終えてボートに戻る際やビーチに戻ってきた際などの浅い水深では、より一層浮上速度に注意しましょう。
※深場では早く浮上して良いという意味ではありません。
ボートの場合はガイドロープ(アンカーロープ等)があればそれをつかみ一握り毎ゆっくり浮上することを心がけましょう。
終わりに
実際のダイビングではラダーの隣にガイドさんがいて手招きをしていたりすることもあります。
ゆっくり浮上するとエキジット待ちが発生することもあります。
それでも自分の体を守るために強い意志を持ってゆっくり浮上しましょう。
またゆっくり浮上する、エキジットを待つという行動をするには十分な残圧が必要です。
残圧がないと恐怖感などから急浮上してしまうリスクが高くなります。
普段からエアマネージメントにも注意しましょう。
限定海域講習をする前に、
「浅いところで講習するから安全!」という説明を受ける人もいるため、潜在的に浅瀬では安全意識が低くなります。
※ここで言う安全とは深場に比べすぐに水面に出られるという意
何をしてもリスクが少ない訳ではないことを頭に入れてダイビングをしましょう!